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「でも、おとうさま。おとうさまはこの徹哉というひとと、どんな関係があるんですの」
「いや、そればかりは聞いてくれるな。おとうさんはこの徹哉という男に、すまないことをしているのだ。それでなんとかして、せめてその子の道之助でもさがし出して、むかしの罪ほろぼしをしたいと思っていたのだが、もうだめだ。道之助は世にも恐ろしい悪党になっているのだ」
博士はそういうと目に涙さえうかべて、
「わしはあのどくろ[#「どくろ」に傍点]指紋のうわさを聞いたとき、すぐにこれは道之助だとさとったのだよ。なぜといって、こんなきみょうな指紋を持っている人間が、世界にふたりとあるはずがないからね。それ以来、わしがどのように苦しんだか……もしあの子がまともな人間に育っていたら……」
「しかしおとうさま、おとうさまはこの徹哉というひとにどんなことをなさいましたの。ねえ、おかくしになっちゃいや。あたしは、なにもかも知りたいの。話してちょうだい。どんなことを聞いてもおどろきゃしないから……」
「美罚ё樱
宗像博士は娘の手をとると、ハラハラと涙をこぼしながら、
「それじゃ話すがね、おとうさんはいけない男だったのだ。おとうさんは、その栗生徹哉という男の財産を横取りしたのだよ」
「な、なんですって」
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「むろん、はじめからそのつもりじゃなかったのだが、結果においてそうなったのだ。美罚ё印ⅳ蓼⒙劋い皮臁
そこで宗像博士が話したのは、つぎのようなざんげ[#「ざんげ」に傍点]話だ。
栗生徹哉と宗像博士とはそのむかし、親友だった。この栗生という男は金持ちのお坊ちゃんだったが、親類というものがひとりもなく、それで財産の管理などもいっさい、宗像博士にまかせていた。
そのうちにかれはおくさんをもらって子どもが生まれた。それがつまり道之助なのである。ところがこの道之助が二つになったとき、栗生は結核で死んだのだが、その死の間ぎわに、あとのことを宗像博士にたのんでいった。むろん博士は親友の遺言を守るつもりだったが、ただこまったことには道之助の母というのが、とてもたちのわるい女で、うかつに財産など渡せないのである。
そこで宗像博士は、道之助が大きくなるまで財産を保管していようと思い、ことばをあいまいににごして、母親のいうことを取りあげずにおいた。すると相手は、てっきり博士が財産を自分のものにするつもりだろうと早がてんして、この復しゅうはかならずするからおぼえていろと、ものすごいおどしもんくを残して、それから間もなく子どもとともに、すがたをくらましてしまったのである。なにしろその女は、まだ正式に栗生の妻になっていなかったので、法律であらそうわけにもいかなかったのだ。
宗像博士はむろん後悔した。母親は母親として、子どもは栗生の子にちがいないのだから、なんとかしてさがし出して財産を渡してやりたいとあらゆる手をつくしさがしたがまるでゆくえがわからない。そのうちに、道之助の母親が死んだということだけは、風のたよりにわかったが、子どもはひとの手からひとの手へと渡っていって、ついきょうの日までゆくえがわからなかったのである。
「おとうさんは決して、はじめからそんな悪いことをたくらんだわけじゃない。しかし結果から見ると、いままで道之助の財産を自分のものにしていたことになる。おとうさんはそれをどんなに苦にしていたろう。だからいっこくも早く道之助をさがしだして、むかしの罪ほろぼしに、あとつぎにして財産をゆずりたいと思っていたのだが、もういけない。だめだ。道之助は世にも恐ろしいどくろ[#「どくろ」に傍点]指紋の怪盗なのだ」
鳴りやむ歌時計
はじめて聞く父の秘密に、美罚ё婴悉嗓螭胜摔嗓恧い郡恧Α
――ああ気のどくなおとうさま。おとうさまが悪いのじゃないわ。みんなその母親というひとが悪いのだわ。
と、そう思うしたから、また道之助のことを考えると、ゾッとするような恐ろしさがこみあげてくる。
――もしおとうさまがそのとき、すなおに財産を渡しておいたら、あのひとも恐ろしいどろぼうなどにならずにすんだかも知れない。世のなかには、しんせつでしたことでも、思いがけない悪いことをひき起こすこともある。もし道之助がそれを知ったら、どんなに父をうらむだろう。
それを考えると美罚ё婴悉胜螭趣猡いà翰话菠摔胜搿¥栅筏蔬命のいたずらに、彼女はその日いちにち泣き暮らしたが、さて、その夜のこと――。
泣きぬれて寝入っていた美罚ё婴稀⒄嬉怪肖搐韷簸韦胜恰ⅳ郡坤胜椁瘫Qを聞いたような気がして、ハッと目がさめた。
「あら、あれ、なんの声だったかしら?」
胸をドキドキさせながら、じっと聞き耳をたてていると、どこかでかすかなオルゴ毪我簸工搿%毳穿‘ルは雨だれの音のように『蛍の光』のメロディ颍唷钉省筏扦皮い搿C婪'子はハッとして枕もとの時計を見ると、ちょうど三時だ。
「まあ、それじゃおとうさま、今夜もお仕事かしら?」
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宗像博士はよく真夜中に起きて仕事をすることがある。そんなとき、博士はいつも、目ざまし時計をかけておくのだが、その目ざまし時計というのは歌時計になっていて、ベルのかわりにオルゴ毪和wの光』を奏でるようになっているのだ。
美罚ё婴悉坤椤⒄嬉怪肖搐恧饯违毳穿‘ルが鳴り出すと、いつも、ああ、また今夜もお仕事だわ、とそのまま寝てしまうのだが、今夜ばかりはどういうものか、父のことが気になってたまらない。それでしばらくじっとその音に耳をすましていたが、すると、ふいにオルゴ毪我簸膝郡趣浃螭馈
「あら!」
美罚ё婴悉撙绀Δ市丐丹铯蚋肖袱俊%毳穿‘ルが終わりまで歌わずに、とちゅうでフ盲趣浃螭坤韦胜螭趣胜瘹荬摔搿¥饯欷恕ⅳ丹盲劋い俊ⅳⅳ韦郡坤胜椁探肖由
美罚ё婴悉饯长恰ⅳ趣猡⒏袱螘鴶趣颏韦兢い埔姢瑜Δ取⑶奘窑虺訾毪取⑾陇丐辘皮い盲俊¥取ⅳ饯长扦肖盲郡辘瘸龌幛盲郡韦⒏袱沃证沃踞⑷馈S⑷猡长渭窑饲薏搐蓼辘筏皮い毪韦扦ⅳ搿
「あら、志岐さん!」
「しッ!」
英三は口に指をあてた。なんとなくまっ青な顔をしている。美罚ё婴悉摔铯恕ⅳ悉菠筏ば丐丹铯蚋肖袱胜椤
「いったい、どうしたの?」
と、声をふるわせてたずねた。
「どうもへんなのです。先生の書斎のほうで、みょうな物音が聞こえたのです」
と、英三も声をふるわせている。
「いって見ましょう。ねえ、いって見ましょうよ」
ふたりはそこで書斎へはいると、パチッと電気のスイッチをひねったが、そのとたん、アッと叫んで棒立ちになった。宗像博士があけに染まってたおれているのだ。
「おとうさま! おとうさま!」
「先生! 先生!」
ふたりはむちゅうになって左右からとりすがったが、博士はすでにこと切れている。見ると胸のあたりに二、三か所、ものすごい突き傷をうけているのだ。
「おとうさま、おとうさま。ああ、だれがこんなことをしたんですの。おとうさまァ!」
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「美罚ё婴丹蟆ⅳ搐椁螭胜丹ぁ¥场ⅳ长欷颍
とただならぬさけび声、ハッとした美罚ё婴⒂⑷沃袱丹工趣长恧蛞姢毪取ⅳⅳⅰⅳ胜螭趣いΔ长趣馈⒈冥摔盲跨Rの上に、ベッタリと血染めの指紋、しかもそれはまぎれもなく、あのいまわしいどくろ[#「どくろ」に傍点]指紋ではないか。
恐ろしい真相
明け方の五時ごろだった。
新日報社の三津木俊助は、由利先生にたたき起こされてあわてて表へとび出した。見ると由利先生は自動車にのって待っている。
「三津木君、いっしょにいこう。どくろ[#「どくろ」に傍点]指紋が人殺しをやったというのだよ」
「え、人殺しですって? そして、殺されたのはいったいだれです?」
「宗像博士だよ」
「なに宗像博士ですって?」
「そうだ、いま警視庁の等々力警部から知らせてきたんだ。ともかくきたまえ」
由利先生にうながされて、俊助が自動車に飛び仱毪取⑺激い堡胜⑾壬韦饯肖摔弦娭椁倘簸つ肖韦盲皮い搿¥饯文肖洗螭庶眼鏡をかけ、帽子をまぶかにかぶり、おまけにコ趣韦à辘颏栅证攘ⅳ皮皮い毪韦恰⑷讼啶悉蓼毪扦铯椁胜ぁS衫壬猡筏绀Δい筏瑜Δ趣悉筏胜盲俊
「それで先生、事件の起こったのはいつのことです」
「ついさきほど、三時ごろのことだそうだ」
と、そんなことをいっているうちに、自動車は早くも紀尾井町の宗像邸へつく。見ると屋敷の周囲には、はや変事をききつけたやじうまがおおぜいむらがっていて、そのなかに、制服の警官や私服の刑事のすがたも見られた。
そのなかをかきわけて由利先生に、三津木俊助、それから例の坨Rの男の三人がなかへはいっていくと、出迎えたのは等々力警部だ。
「やあ、先生。よくきてくれましたね」
「ふむ。先程は電話をありがとう。ところでまたどくろ[#「どくろ」に傍点]指紋が残っていたそうだね」
「そうですよ。じつにふしぎですよ。ときに先生……」
と、警部がなにかささやくと、由利先生はニンマリうなずきながら、
「いや、だいじょうぶだ。それはわしが保証する。ゆうべはずっとわしのそばにいたのだから」
と、みょうなことをいったかと思うと、
「とにかく、現場を見せてもらおうか」
と、俊助と坨Rの男をうながしながら、書斎へはいっていった。書斎はまださっきのままで、宗像博士の死体もそこに横たわっている。
「先生、これが例の指紋です。そして、この写真が、ゆうべ三津木君がチラと小耳にはさんだという写真にちがいありません」
と、等々力警部が指さしたのは、例の栗生徹哉の写真だ。それを見ると、由利先生も俊助もアッとばかりにおどろいたが、とりわけいちばんおどろいたのは坨Rの男。まるで幽霊でも見つけたように、じっとその写真の前に立ちすくんでいたが、由利先生がポンとその