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少年はとうとう見つかってしまった。大野老人は少年をよろいごと、いす[#「いす」に傍点]にしばりつけると、いろんなことをたずねたが、それからきゅうに大さわぎをして荷物をまとめて、自動車で逃げてしまったらしいのだ。
ところがそれから間もなくまた、魔法使いのようなおばあさんがやってきた。そして少年の見たこと、聞いたことを話させた。少年は本物の文彦がきたこと、金の小箱をもらっていったこと、さてはまた、文彦の住所まで話してしまった。おばあさんは縄をといてくれたが、もうしばらくそっとして、ようすを見ているようにといって、急いで出かけてしまったというのだった。
「ぼくはしばらく待っていましたが、なんだかこわくなってきたので、逃げだそうと思ったんです。しかし、あのよろいは、とてもひとりではぬげません。それでよろいごとこの家をぬけだして、ふうふう步いているうちに、おじさんたちがやってきたので林のなかへ逃げこんだんです」
少年の話がおわると、金田一耕助はうなずいて、
「なるほど、みょうな話だね。しかし、きみは、どうしてそのおばあさんと知り合いになったの?」
「ぼくは上野で、くつみがきをしてたんです。何年もまえからずっとそんなことをしていたんです。ぼくの名、|三《さん》|太《た》というんです。するとある日、あのおばあさんがやってきて、まごが死んだからそのかわりに家へひきとって育ててやろうと、あそこへ連れていったんです」
「あそこって、どこだい?」
金田一耕助がそうたずねると、とたんに、少年の顔がまっ青になった。ブルブルからだをふるわせながら、
「いえません。それだけはいえません。あそこは地獄だ。地獄のようなところです。銀仮面……仮面の城……ああ、恐ろしい。それをしゃべったら、こんどこそ殺されてしまいます」
少年はそれきり口をつぐんでしまって、金田一耕助がどんなになだめてもすかしても、がんとして口をひらこうとはしなかった。
ああ、それにしても、いま少年の口走った銀仮面、仮面の城とはなんのことだろうか。
茫茸
三太はかわいそうな少年だった。かれは自分の名まえも|名字《みょうじ》も知らないのだ。道を步いているときに車にはねられてしまい、ひどく頭をうって、それから自分がだれだか、忘れてしまったらしいのだ。おとうさんやおかあさんが、あるのかないのか、それさえわからなくなってしまったのである。仲間はかれを、三太だとか|三《さん》|公《こう》だとか呼んでいるが、それもかってにつけた名まえで、ほんとの名まえではない。
それを聞くと文彦は、たいそうこの少年に同情してしまった。金田一耕助もあわれに思って、自分の家へ連れていくことになった。
「とにかく文彦くん、きみを先に送っていこう」
「でも、先生、そうすると電車がなくなって、おうちへ帰ることができなくなりますよ」
「なに、だいじょうぶだ。自動車もあるし……」
そこで金田一耕助は三太を連れて、文彦を送っていくことになったが、じっさい、夜はもうすっかりふけて、三人が文彦のうちのそばまで帰ってきたときには、もう十二時近くになっていた。むろん、どの家もピッタリしまって、電燈の光も見えない。月も西にかたむいて空には星が二つ三つ。
さて、文彦のうちへ帰るには、電車をおりてから、長い坂をのぼらねばならない。ところが、三人がその坂の途中まできたときだった。とつぜん、坂の上から自動車がもうれつな勢いでおりてきた。
その自動車のヘッドライトを頭から、あびせかけられた三人は、あわててみちばたにとびのいたが、すると、間もなくそばを走りすぎる自動車から、ヌ盲阮啢颏坤筏郡韦稀ⅳⅳⅳ胜螭趣いΔ长趣坤恧Α¥埭蚊妞韦瑜Δ衰磨毳磨毪趣筏啤ⅳ筏狻ⅴ楗殂y色にかがやく顔ではないか。
「アッ、銀仮面だ!」
叫ぶとともに三太少年、がばと地上にひれふしたが、そのとたん、
ズドン!
自動車の窓から火を噴いて、一発のたま[#「たま」に傍点]が、三太の頭の上をとんでいった。ああ、あぶない、あぶない、三太がぼんやり立っていたら一発のもとにうち殺されていたことだろう。
「ちくしょうッ!」
金田一耕助はバラバラとあとを追いかけたが、相手はなにしろフル.スピ嗓亲撙盲皮い胱詣榆嚖扦ⅳ搿¥蓼郡郡gにそのかたちはやみのなかに消えてしまった。しかも、テ毳楗螗驻庀筏皮い郡韦恰ⅴ圣螗些‘.プレ趣蛞姢毪长趣猡扦胜盲郡韦馈
金田一耕助はすぐにもよりの交番へかけつけ、身分をうちあけ大至急、怪自動車をとり押さえるよう、手配をしてもらった。それから文彦のほうをふりかえると、
「文彦くん、とにかくきみのうちへいこう。なんだか気になる。あの自動車はきみのうちのほうからやってきたぜ」
「せ、先生!」
文彦はガタガタふるえている。
「心配するな。三太、きみが銀仮面というのは、いまのやつのことかい?」
「そ、そうです。おじさん、あいつは、ぼ、ぼくを殺そうとしたのです」
これまた、まっ青になって、ガタガタふるえているのだ。
「ふむ、ヘッドライトの光で、きみのすがたを見つけたので、びっくりして、殺してしまおうとしたんだな。とにかく急ごう」
大急ぎで坂をのぼって、文彦のうちのまえまでくると、お隣のおばさんが窓からのぞいて、
「まあ、文彦さん、どうなすったの、あなたおけがをしたんじゃなかったんですか?」
「おばさん、ぼ、ぼくがけがを……?」
「ええ、たったいまお使いのひとが、自動車で迎えにきたんですよ。成城のそばで電車がしょうとつして、あなたが大けがをなすったから、すぐきてくださいというので、おかあさまは、いま、その自動車にのって、とんでおいでになりました。あなたそこらで出会やァしなかった?」
ああ、それじゃいまの怪自動車におかあさんがのっていたのか……。
「せ、先生、先生!」
「だ、だいじょうぶだ、ふ、文彦くん。ああしておまわりさんに、手配をたのんでおいたから、きっと自動車はつかまる。おかあさんも助かる。だいじょうぶだ、だいじょうぶだ。お隣のおくさん、ありがとうございました。そしてその使いというのはどんな男でした?」
「幛亭颏堡俊ⅳ蓼廊簸い窑趣韦瑜Δ扦筏郡琛¥ⅳ欷饯螭蕫櫲摔胜韦筏椤
お隣のおくさんもおどおどしている。
文彦はなにげなく、啵П闶埭堡颏ⅳ堡皮撙俊¥い膜猡ⅳ丹螭悉扦堡毪趣ⅴ坤巍⒂盲驎い考垽胜嗓颉ⅳ饯长丐郅Δ辘长螭扦い韦馈
「せ、先生、こ、こんなものが……」
文彦がとりだしたのは、一通の封筒だった。裏にも表にもなにも書いてなくて、ただ、封じ目に赤いダイヤの形が一つ。
金田一耕助が封をきってみると、
[#ここから2字下げ]
竹田文彦よ。
もしきみがおかあさんを大事と思うなら、あすの夜十二時、|吉祥寺《きちじょうじ》、|井《い》の|頭公園《かしらこうえん》、一本スギの下まで、黄金の小箱を持参せよ。もしこの命令にそむくとき、また、このことをひとにもらすときは、きみはふたたびおかあさんに会うことはできないだろう。
[#ここで字下げ終わり]
[#地から2字上げ]銀 仮 面
六つのダイヤ
「文彦くん、しっかりしなきゃだめだ。いまは泣いたり、わめいたりしているばあいじゃない。われわれは戦わねばならん。にくむべき銀仮面と戦わねばならん。そして、あいつを倒し、おかあさんを助けるのだ。文彦くん、しっかりしたまえ」
「先生、すみません。そうでした。泣いているばあいじゃありませんでした。ぼく、戦います。おかあさんのために戦います」
「おじさん、ぼ、ぼくも手伝います。ぼくもいっしょに、銀仮面と戦います」
三太もそばからことばをそえる。あれから間もなくうちへはいった三人は、こうしてたがいにはげまし合ったのである。
「よし、それじゃ三人力を合わせて、銀仮面と戦うのだ。食うか食われるか、文彦くん、三太、どんなことがあっても、途中で弱音をはいちゃいかんぜ」
文彦と三太は強く、強くうなずいた。金田一耕助はにっこり笑って、
「よし、それで話はきまった。さて、問睿辖黏蜗浃坤⑽难澶蟆ⅳ长Δ胜盲郡椤ⅳ胜摔猡猡Δ沥ⅳ堡皮欷毪坤恧Α
文彦は香代子とのあいだにとりかわした、三つの約束を思いだした。しかし、おかあさんにはかえられない――。そこでいちぶしじゅうの話をすると、箱のあけかたまでうちあけた。
「なるほど、8.1.3だね。よし、あけて見たまえ」
8……1……3……。
ダイヤルをまわすごとにチ蟆ⅴ俩‘ンと、すずしい音がした。そして、さいごの3に合わせたとたん、パチンとかすかな音がして、金のふたがあいた。
なかには白いま[#「ま」に傍点]|綿《わた》がギッチリと、すきまなくつめこんである。文彦はふるえる指で、そのま[#「ま」に傍点]綿をとりのぞいていったが、そのうちに、アッという叫び声が、三人のくちびるからいっせいにとんで出た。
ああ、なんということだろう。ま[#「ま」に傍点]綿のなかには|鶏《けい》|卵《らん》くらいのダイヤが六個、さんざんとしてかがやいているではないか。ああ、そのみごとさ、すばらしさ、赤に、青に、紫に、かがやきわたるまえには、黄金の箱さえみすぼらしいほどである。
「ああ、ダイヤだ。ダイヤだ。ダイヤモンドだ。しかも、これだけの大きさのものが、世界にいくつもあるはずがない。それがどうしてこの箱に……」
金田一耕助は、気がくるったような目つきをして、箱のなかをにらんでいる。
「せ、先生、こ、これは本物でしょうか?」
「本物だとも。にせものじゃ、とてもこれだけの光はでない」
「おじさん。いったいどのくらいの値うちがあるの?」
「三太、そ、それはむりだ。とても計算できるものじゃない。何十儯⒑伟賰|か……これだけの大きさのこれだけの粒のそろった、傷のないダイヤモンドは、世界にぜったいに類がないんだ」
金田一耕助が、気がくるいそうに思ったのもむりはなかった。
ダイヤモンドのような宝石類を